【門脈シャント闘病記④】術後発作を乗り越えた愛猫の9日間

短足猫の健康ケア
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本記事は、筆者の愛猫が門脈シャントと診断され、手術・治療を受けた際の体験記です。

症状や経過、治療効果には個体差があります。

診断・治療方針については、必ず獣医師などの専門家にご相談ください。

本記事の内容によって生じたいかなる損害についても、当方は責任を負いかねます。

生後半年のときに先天性の“門脈シャント”が見つかった我が家の愛猫『うに』

先天性の門脈シャントの発症率は猫では“2%”と非常に稀です。

参考:猫との暮らし大百科

それもあってか、

  • どんな症状がでて気づいたのか
  • 手術後無事に回復できたのか

などの体験的な情報をなかなか見つけることができませんでした

だから、当時の私たちと同じ境遇の方にとって、「少しでも希望になれば…」と思い、【門脈シャント闘病記】を作ることにしました。

そして、その4つ目となる今回は、門脈シャントの闘病における最大の強敵“結紮後発作症候群(術後発作)”に焦点をあてています

手術まではとんとん拍子だった『うに』。

発作が起きないことを祈りましたが、術後3日目に発作は起こってしまいました。

【門脈シャント闘病記④】は、発作が起きてから、ICU管理を経て、無事に退院するまでを記録しています。

“発作が起こっても回復する猫もいる”

そのことが、同じ境遇の飼い主の方にとって、わずかでも希望になれば幸いです。

うにろぐ編集部

・ぽな(うにママ)|監修・デザイン
・せな(うにパパ)|執筆

『うに』の病気がきっかけで、猫の体調や環境づくりについて学び、猫検定初級に合格

スマートホーム歴5年の知識を活かし、
・温湿度管理の自動化
・外出中の見守り

など、人も猫も暮らしやすい部屋づくりを実践・発信します

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門脈シャント手術後の入院生活

手術を終えた直後に面会した『うに』は、思っていたよりも元気な姿を見せてくれました。

立ち上がって尻尾を振り、ケージ越しにこちらへ寄ってきてくれた姿に、ほっと胸をなでおろしたのを覚えています。

※手術直後の様子は「門脈シャント闘病記③」にまとめています。

しかし、この日を境に3日間は“術後発作”のリスクが高いため面会謝絶に。

病院からは次のように説明を受けました。

  • 発作がいつ起こるかわからない
  • 飼い主を見て興奮すると危険が高まる

その代わり、入院中の様子を1日1回公式LINEで送ってくれるサービスを利用することに。

届いた写真には、食欲もあり、顔つきもしっかりしている『うに』の姿がありました。

術後、まだ発作が出る前の元気な『うに』
術後1日目の『うに』。食欲もあり、ケージ内をうろうろしてたみたいです。実はお気に入りの1枚。

看護師さんにも甘えていたようで、直接会えない日々の心細さを少し和らげてくれました。

もちろん、写真を送ってくれるだけではなく、入院管理そのものも徹底されていました。

24時間体制で30分ごとに様子を確認し、何かあればすぐに対応できるようにしてくれていたみたいです。

『うに』のケアはもちろん、飼い主の気持ちにまで寄り添ってくれる病院に「やっぱりここに任せて良かった!」と強く感じました

手術3日目に起きた術後発作

手術から3日目の2024年9月3日の朝。仕事をしながらも、頭の片隅では『うに』のことが離れませんでした。

というのも、この日は手術から72時間という最も“術後発作”がとされるタイミングだったからです。

参考:『もう怖くない!?門脈体循環シャント結紮後発作症候群の発生機序に関する新しい仮説』

時計を何度も見ては「何事もなく過ぎてほしい」と願いましたが、その願いは午前10時ごろの電話で破られてしまいました。

発信元は病院。

胸が締めつけられるような感覚を覚えながら電話にでると、相手は担当医で次のように伝えられました。

  • 発作が朝8時すぎに起きた
  • ふらつきと大量のよだれを確認
  • 重度に移行する前に強めの鎮静剤を注射し、眠らせて対応
  • 現在はICUで安定して眠っている
  • 薬を段階的に減らし、発作のコントロールを目指す

なるべく冷静になるように努めましたが、それでも胸の内は落ち着きませんでした。

前日まで元気だったこともあり、心のどこかで「もう大丈夫かな?」と思っていたんだと思います。

それでも、「すぐに処置ができた」「今は眠って安定している」という言葉が支えになりました。

本来は面会謝絶でしたが、「短時間の面会なら」と許可が下りたので、仕事を切り上げて病院へ向かうことを決めました。

発作当日の『うに』の様子

病院に着いたのは午後2時ごろ。

ICUのケージ越しに見えた『うに』は、薬の効果が薄れてきたのか、うっすらと目を開けていました。

しかし、声をかけても反応はありませんでした。

面会時の『うに』の様子(閲覧は自己責任でお願いします

首は一定の間隔で秒針のように小刻みに左へ回り、限界まで左を向くと元に戻るような動きを繰り返していました。

そして、首が動くたびに目が大きく開いていましたが、焦点はどこにも合っていないように見えました。。

この姿を目の当たりにして、「本当に回復できるのだろうか」というどうしようもない不安に心が張り裂けそうになっていました。

看護師さんや担当医からは「これでもまだマシな状態です」と説明を受けましたが、その言葉をすぐには受け止められませんでした。

それでも、転院時に「発作が起きても迅速に対応できる病院だ」と思ったから『うに』を託したことを思い出し、 ここまで守ってきてくれた病院スタッフと、『うに』自身の持つ生命力を信じることにしました。

発作後のICU管理と後遺症

発作後の『うに』は、数日間にわたりICUでの集中管理が必要になりました。

毎日、少しずつ回復していく様子が見られた一方で、後遺症があることも判明。

ここでは、その経過と状況についてお伝えします。

ICUでの集中管理と回復

発作からの3日間、『うに』はICUでの集中管理を受けていました。

病院スタッフの方が10〜15分おきに様子を確認するなど、一般の部屋にいた頃よりも充実した体制を整えてくれていました。

ケージには経過や処置内容が記された紙が貼られ、細かく記録されていたことを覚えています。

発作翌日の面会では、薬の効果でうとうとしている時間が多かったものの、前日よりも動きが見られました。

※注意:縫合痕やICU内での様子が含まれます。クリックで表示が切り替わります。

ICUでの『うに』(モザイク⇄通常 クリックで切替)
発作翌日の『うに』:少し落ち着いてすやすや眠っていました

ペースト状のフードならお皿を近づけると、ゆっくりではあるものの自分で近づいて食べられるほどに回復していて、少し安心できました。

さらに翌日には、声をかけるとわずかに反応し、よたよたとした足取りながらも歩こうとするまでに回復。

この変化を目にした時、「本当に、よく持ち直してくれた」と胸が熱くなりました。

そして、発作から4日が経ち、ようやく元の一般の部屋に戻ることが決定。

このスピードで回復できたのは、病院スタッフの方の迅速な対応と『うに』自身の頑張りがあったからこそだと強く感じました。

後遺症『視力障害』と回復の可能性

順調に回復してくれた一方で、残念ながら後遺症“視力障害”も残りました。

ある程度動けるようになった頃、看護師さんが『うに』の反応を確認した時の様子を動画で見せてくれました。

そこには、床を擦るように物を動かすと手を伸ばそうとする一方で、空中(『うに』の眼前)で物を動かしても、何の反応も示さない姿が映っていました。

視覚が機能していないことがほぼ確定的なものになり、胸が締め付けられる思いでした。

『うに』は手術をする前は、ベランダの前に座って外をじっと眺めるのが好きな子だったからです。

それでも、命が助かり、回復しつつある事実の方がずっと大きく、私たちは前を向いて全力で『うに』を支えることを決意しました。

手術9日後に迎えた退院日

一般の部屋に移ってからの『うに』は、顔つきも足取りもしっかりしてきて、日に日に回復していることを実感できました。

病院スタッフの方々は変わらずこまめに様子を見てくださり、私たちの不安もどんどん薄れていきました。

面会時には部屋から出す許可がおり、抱っこや撫でることができるように。

視力が戻っていなかったからか、歩き方は慎重でしたが、髭や鼻を頼りに壁にぶつかることなく周囲を探検していました。

一般の部屋に戻って点検中の『うに』
一般の部屋に戻り、周囲を点検中の『うに』。慎重ながらも自分の足で歩き、少しずつ回復している様子が伝わってきます。

その姿からは、「見えなくても前に進もうとする強さ」をしみじみと感じました。

また、担当医から「網膜に問題はなく、光には反応しているので、視力が回復する可能性はある」と嬉しい説明もありました。

もちろん、絶対に戻るという保証はなく、戻ってもどこまで戻るのかはわからないということでしたが、希望をもつには十分な話でした。

結局、入院中に視力が戻ることはありませんでしたが、薬の調整もうまく進み、体調は安定。

2024年9月9日、9日間の入院を経て、ようやく退院の日を迎えました。

長く感じた入院生活を終え、キャリーの中で落ち着く『うに』を見て、無事に連れて帰れる喜びと、これからの生活への覚悟が同時に湧き上がりました。

まとめ:発作後も信じて向き合う大切さ

以上、門脈シャント闘病記④でした。

『うに』は手術が終わって2日目までは順調でしたが、発作が起きてしまいました。

それでも病院スタッフの方々の迅速で丁寧な対応、『うに』自身の頑張りのおかげで無事に回復。

そして、退院の日を迎えることができました。

この経験を通して強く感じたのは、“病院選びを本気で考えてよかった”ということです。

もちろん、他の病院でも結果は同じだったかもしれないし、逆に転院しなければよかったと思うことになっていたかもしれません。

でも、だからこそ、飼い主には難しくても自分の意思で後悔のない選択をしてほしいと思っています。

そして、『うに』は回復できましたが、残念ながらそうはならないことも…

それでも、発作が起きたからといって諦めるのではなく、“病院”と“愛猫”、そして、これまで選択を重ねてきた“自分自身”を信じてあげてほしいです。

この記事が、門脈シャントと戦う猫とその飼い主にとって、少しでも希望になれたらと嬉しいです。

そして、同じ病気で苦しむ猫たちが、少しでも多く元気を取り戻せることを心から願っています。

以上、『うに』の飼い主『せな』&『ぽな』でした。

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